ヨセフの涙

「ヨセフは彼らを離れて行って泣き、また帰ってきて彼らと語り、そのひとりシメオンを捕えて、彼らの目の前で縛った。」(創世記‬ ‭42‬:‭24‬)

ヨセフは奴隷から囚人となり、神の計らいによってエジプトの権力者となった。ヨセフこの地(エジプトやパレスチナなどの中東地域)のすべての人に穀物を売る者であった。

飢饉が酷く穀物が取れなくなったある時、ヨセフの兄弟たちがエジプトに穀物を買いにやって来て、顔を地に付けて彼を伏し拝んだ。ヨセフは兄弟たちを見て、それと分かったが、彼らに対して見知らぬ者のようにふるまい、荒々しいことばで彼らに言った。「おまえたちはどこから来たのか。」すると彼らは答えた。「カナンの地から食糧を買いに参りました。」ヨセフには兄弟たちだと分かったが、彼らにはヨセフだとは分からなかった。

ヨセフはかつて彼らについて見た夢を思い出して言った。「おまえたちは回し者だ。この国の隙をうかがいに来たのだろう。」彼らは言った。「いいえ、ご主人様。しもべどもは食糧を買いに参りました。私たちはみな、一人の人の子です。私たちは正直者です。しもべどもは回し者などではございません。」

かつてヨセフを憎み、エジプトに売り飛ばした兄たちが自分たちのことを正直者だと呼ぶのも、いささか違和感を感じるのだが、ヨセフは彼らとの関わり方をさぐっ言った。「いや、おまえたちは、この国の隙をうかがいにやって来たのだ。」(創世記 42:6-12)

それから三日後、ヨセフは兄たちのところに来てこう言った。「次のことで、おまえたちを試そう。ファラオのいのちにかけて言うが、おまえたちの末の弟がここに来ないかぎり、おまえたちは決してここから出ることはできない。おまえたちのうちの一人を送って、弟を連れて来い。それまで、おまえたちを監禁する。おまえたちに誠実さがあるかどうか、おまえたちの言ったことを試すためだ。もし誠実でなかったら、ファラオのいのちにかけて言うが、おまえたちは間違いなく回し者だ。」

ヨセフは彼らから離れて、泣いた。それから彼らのところに戻って来て、彼らに語った。兄たちに会えたことでの感動もあり、また辛い気持ちもきっと交錯したことだろう。昂った気持ちを抑えられずに思わず泣いてしまったに違いない。

そして彼らの中からシメオンを捕らえて、彼らの目の前で彼を縛った。ヨセフには策略があったからだ。

ヨセフは彼らの袋に穀物を満たし、それぞれの袋に彼らの銀を戻し、さらに道中の食糧を与えるように命じた。それで、人々はそのとおりにした。彼らは穀物を自分たちのろばに背負わせて、そこを去った。さて、彼らの一人が、宿泊所で自分のろばに飼料をやろうとして袋を開けると、自分の銀が、見よ、自分の袋の口にあった。

彼は兄弟たちに言った。「私の銀が戻されている。しかもこのとおり、私の袋の中に。」彼らは動転し、身を震わせて、互いに言った。「神は私たちにいったい何をなさったのだろう。」(創世記 42:15,16,24-28)

ヨセフは自分自身を辛い目に遭わせた兄たちに対して優しく、親切に振る舞った。

私たちの中には、自分の家族から酷い目に遭わされ、辛い思いを持っている人もいるだろう。辛くて泣き、また再会して泣き、どのように接したら良いかわからず、困惑するかもしれない。

しかしもし私たちが親切に接することが出来たとしたら、素晴らしいことではないか。主は私たちに親切さをもって愛を示すことを望んでいる。

私も親切な者となりたい。

愛する天のお父様、どうか不親切な人にも親切になることができますように。主イエスキリストの御名によって、アーメン。