傾聴とエンパワメント

「彼女は言った、「どうぞ、はしためにも、あなたの前に恵みを得させてください」。こうして、その女は去って食事し、その顔は、もはや悲しげではなくなった。」(‭‭サムエル記上‬ ‭1‬:‭18‬)

エルカナは、犠牲をささげる日、妻ペニンナとそのむすこ娘にはみな、その分け前を与えた。 エルカナはハンナを愛していたが、彼女には、ただ一つの分け前を与えるだけであった。主がその胎を閉ざされたからである。 また彼女を憎んでいる他の妻は、ひどく彼女を悩まして、主がその胎を閉ざされたことを恨ませようとした。 こうして年は暮れ、年は明けたが、ハンナが主の宮に上るごとに、ペニンナは彼女を悩ましたので、ハンナは泣いて食べることもしなかった。

夫エルカナは彼女に言った、「ハンナよ、なぜ泣くのか。なぜ食べないのか。どうして心に悲しむのか。わたしはあなたにとって十人の子どもよりもまさっているではないか」。 

シロで彼らが飲み食いしたのち、ハンナは立ちあがった。その時、祭司エリは主の神殿の柱のかたわらの座にすわっていた。 そして誓いを立てて言った、「万軍の主よ、まことに、はしための悩みをかえりみ、わたしを覚え、はしためを忘れずに、はしために男の子を賜わりますなら、わたしはその子を一生のあいだ主にささげ、かみそりをその頭にあてません」。 ハンナは心のうちで物を言っていたので、くちびるが動くだけで、声は聞えなかった。それゆえエリは、酔っているのだと思って、 彼女に言った、「いつまで酔っているのか。酔いをさましなさい」。 しかしハンナは答えた、「いいえ、わが主よ。わたしは不幸な女です。ぶどう酒も濃い酒も飲んだのではありません。ただ主の前に心を注ぎ出していたのです。 はしためを、悪い女と思わないでください。積る憂いと悩みのゆえに、わたしは今まで物を言っていたのです」。

そこでエリは答えた、「安心して行きなさい。どうかイスラエルの神があなたの求める願いを聞きとどけられるように」。 彼女は言った、「どうぞ、はしためにも、あなたの前に恵みを得させてください」。こうして、その女は去って食事し、その顔は、もはや悲しげではなくなった。 彼らは朝早く起きて、主の前に礼拝し、そして、ラマにある家に帰って行った。

エルカナは妻ハンナを知り、主が彼女を顧みられたので、 彼女はみごもり、その時が巡ってきて、男の子を産み、「わたしがこの子を主に求めたからだ」といって、その名をサムエルと名づけた。」(‭‭サムエル記上‬ ‭1‬:‭4‬-‭9‬, ‭11‬, ‭13‬-‭20‬)

ハンナの夫エルカナには、ハンナとペニンナという妻がいた。ペニンナは子どもののいないハンナをいじめた。だからハンナは泣き、食事も喉が通らないほどであった。

子宝に恵まれず、同居する夫の別の妻からいじめられるのは、とても苦しくうつ的な状況だったことであろう。結婚は本来一夫一婦制として神が定められたものであるが、妻たちの争いは、一夫多妻という人間たちが勝手に作り上げた結婚制度から来る、典型的な負の遺産である。

ハンナには、あまりにも苦しく辛すぎて言葉にならず、ただ主に心を注ぎ出して祈ることしか出来なかった。私たちもうつ状態になると、眠れないし、食べれないし、ひどいと起き上がることさえもできない。

シロの神殿に行き、祭司エリから「安心して行きなさい。どうかイスラエルの神があなたの求める願いを聞きとどけられるように」と励ましの言葉を受けて、ハンナも主に祈り、心に元気を取り戻した。そして主はハンナにサムエルを与えられたのである。

私たちも主に祈るが、同じく自分の苦しみに耳を傾け、最後に一言励ましと祝福の言葉を声がけられると元気を取り戻すきっかけにもなる。

苦しみ辛い思いをしている人の声を聞くことはなんと力強いことか!

愛する天のお父様、私たちが苦しみや悩みの中に置かれるとき、あなたが私たちの祈りを聞いてくださいます。私たちも人々の苦しみに耳を傾ける者としてください。主イエスキリストの御名によって、アーメン。